バナナはおかずに入るんですか?
秋だ。
行楽の秋、食欲の秋。
「行楽と食欲」と言えば「遠足のお弁当」だろう。
そして遠足のお弁当タイムといえば思い出す言葉がある。
「バナナはおやつに入るんですか?」
最早古典中の古典と化したこの台詞に、真っ向から向き合ってみたい。
「じゃあバナナはおかずだとでもいうのか!」
……と。
ん?
おかず?
その時、私の中に何かがひらめいた。
「バナナはおかずに入るんですか?」
ひらめいてしまったからには仕方が無い。確かめてみよう。
バナナ、買って来ちゃいました。
さて、「バナナはおかずに入るのか」という事だが、私的にはバナナは朝食だ。
いきなり言い切ってしまったが、朝食になり得るという事はおかずにもなり得るという事ではないか。
そうは思いませんか? 思って下さい。思わないと話が進みません。
これからバナナを調理して、その『おかず度』を調査してみたい。
『おかず度』 は☆5段階表示で示したい。ポイントは「ご飯に合うか否か」だ。
白いご飯に合うバナナ料理を探してみました。
●エントリーナンバー1 ・ バナナソテー●
油で炒めれば大抵のものは美味しくなるのではないか。
そんな思いに突き動かされて、半身におろした(縦に半分に切った)バナナを豪快に油を引いたフライパンに投入した。
味付けはシンプルに塩胡椒だ。
フライパンの上で、こんがりと色付いてゆくバナナ。
……何故か甘酸っぱいというか、酸っぱい臭いがして来た。
不安になる。
しかも火の通ったバナナはぐずぐずに柔らかくなり、菜箸で触ると自重に耐え切れず崩れてしまう。
そんな中、出来ました。バナナソテー。
照りが凄いです。そして崩れました。
肝心の味はどうだろう?
甘かった。ひたすら甘く、遠くで塩と胡椒が手を振っている……そんな味だ。
油が加わったからか、おかずと言うよりお菓子っぽい味。
バナナソテー おかず度2 ★★☆☆☆
●エントリーナンバー2 ・ 焼きバナナ●
洋風の後は和風だ。
「焼き魚」をイメージした「焼きバナナ」だ。イメージは秋という事でサンマだ。
魚焼きグリルにバナナを投入する。生まれて初めての経験だ。
火を通すと柔かくなる事がわかったので、下に落ちないようにアルミホイルを敷いた。
焼き上がりは一見、こんがりパリパリに見えた。実際はゆるゆるです。
漂う甘く酸っぱい臭い。
いけない事をしている気分ばかりがつのる。
焼きバナナには大根おろしと醤油を添えて。
バナナ部分のみ食べる。味はやっぱり甘い。お菓子だ。
駄目か……そう思いかけた時に、焼きバナナに化学反応が起きた。
大根おろしと醤油と一緒に食べると、おかずっぽい味になる!
食べたことの無い味だけど、おかずっぽい!
甘みが抑えられて、これならご飯と一緒に食べられる!!
焼きバナナ おかず度4 ★★★★☆
(ただし、大根おろしについてはカステラに合わせても美味しいので、おかずになるのはバナナではなく大根おろしの功績なのかも知れない)
●エントリーナンバー3 ・ バナナスープ●
焼き物と来たら次は汁物だ。
私が「もう一品欲しいな」という時に作るシンプルなスープ。
基本はコンソメの素とジャガイモ……それにタマネギやキャベツやニンジンやミックスベジタブルやベーコンやハムやウィンナーなど、その時ある物を一緒に煮込んだ簡単なスープ。
今回はコンソメの素、ジャガイモ、キャベツ、ベーコンにバナナを加えてみた。
いつだったかテレビでバナナを蒸し焼きにして食べる国があるというのを見た事がある。芋のような味だと聞いたような気がする。うろ覚えながらその記憶に賭けてみたい。
バナナは芋っぽくなるのか、なってくれ!
約束された美味しさの中にバナナが特攻をかける。
入学式以降何の波風も立たずにすっかり馴染んだ平和なクラス。
夏休み明けの新学期、始業式のあと教室にやって来た先生がおもむろに切り出す。
「今日からこのクラスに新しいお友達がやって来ます」
ざわめくクラスメイト。高まる期待。果たして転校生はクラスの人気者になれるのか、それともクラスの和を壊してしまう問題児なのか?
煮てみたら色が変わって茄子っぽくなったのです。
とにかく煮ている間の臭いが甘い。そして煮たバナナは茄子っぽい見た目になった。
芋を期待したはずが茄子になった。いや、問題は味だ。味はいけるかも知れない。
一縷の望みを賭けて、まずバナナだけを食べてみる。
……ぶよぶよした歯ざわり。芋には程遠い。
そしてとにかく甘い! ……あれ? しょっぱい? 甘くて酸っぱくて甘じょっぱいよ?
甘さの後からコンソメの塩っぽさが追いかけて来る。
食べた事の無い、敢えてまた食べたいとも思えない味だ。
バナナの後でジャガイモを食べたら、その無難な味に心底ほっとした。芋は偉いと思った。
スープだけ飲んでみたらバナナの甘さが入り込んで、全体的に甘くぼやけた感じの味になっている。
転校生は平和だったクラスに波乱を巻き起こした。学究崩壊寸前だ。
いや、どんな子にだって長所はある。投げ出したら駄目だ。
試しにバナナをキャベツやベーコンと一緒に食べてみた。
……あれ? 甘さが気にならなくなった? おかずっぽいよ!
バナナは他の物と一緒に食べるとおかずっぽくなるのかも知れない。
それだけだと甘かったスープもキャベツと一緒に食べたら美味しかった。
慣れない環境で戸惑い、荒れる転校生。
そんな転校生を救ったのは散々迷惑をかけてきた同じクラスの仲間達だった。
「一人で悩むなよ、俺達クラスメイトじゃないか」
クラスメイトに受け入れられ、励まされて自信を取り戻す転校生。
クラスに笑顔が戻った。
……でも甘いものが駄目な人には全く向かない味だと思う。
バナナスープ おかず度3 ★★★☆☆
くじけそうになりながらも、ここまでで美味しかったものを振り返ってみた。
大根おろし……いや、凄いのは大根おろしではなく醤油ではないだろうか?
豆腐にだって刺身にだってご飯にだって醤油をかければ美味しくなる。
ならば次のチャレンジは決まった。「醤油味」だ。和食だ!!
●エントリーナンバー4 ・ 肉じゃがバナナ●
和食の代表選手は肉じゃがだ。
歴史的に言えば明治以降の食べ物だが、和食の中でその地位を不動のものにしているのだから頼もしい。
途中まで普通に作った肉じゃがを小鍋に分けてバナナを加える。
母一人子一人ながら南の国でのびのびと育ったバナナ。
その母を亡くしたバナナは初めて会った父に引きとられ父の祖国日本へやって来た。
しかし父には肉じゃがという立派な家庭があったのだ。
果たしてバナナは義母や異母兄弟に溶け込んで環境の違うこの国で生きて行く事が出来るのか。
肉を加えて出汁で煮込んだらバナナが灰色になりました。
煮込んでいると、台所に荒々しいケモノ臭が漂った。
何だこれは。牛とバナナが完全に鍋の中で喧嘩している。
正直に言おう、この時は失敗を覚悟した。
控えめに慎ましやかに家長(牛)を立てて暮らす家族。バナナにはそんな暮らしは窮屈だった。
家風に馴染めず反発するバナナ。そんなバナナを持て余す家族。
父(牛)は高圧的にバナナを押さえ込もうとする。
家の中に巻き起こる不和の嵐。
しかし味を染み込ませる為に一度冷まして、再び暖めなおした時に変化が現れた。
わりと普通の臭いなのだ。時間がたって彼らの仲が落ち着いたのか?
単に臭いに慣れただけだったらどうしようかと思いつつ、皿に盛り付けた。
作っちゃった物は仕方ないので、おそるおそる試食してみます。
まずはバナナ部分だけを試食。
毎度おなじみ火の通った甘いバナナの味だ。
でも心なしか落ち着いた味になっている気がする。アリかナシかなら、ナシではない。
バナナ以外の部分を食べてみて驚いた。全体的に味がまろやかだ!
普通に作った肉じゃがと食べ比べてみたが、野菜も牛も、普通の肉じゃがよりも甘みが深く優しい味になっていた。これは美味しい。
牛肉なんて、普通に作った時の方がケモノ臭さが強い。
バナナはおかずよりも調味料に向いているのかもしれないと一瞬思う。
困難に直面した時、家族は本来の絆を取り戻す。
普段は影で家族を支える母(タマネギ)が子供達(ジャガイモ・ニンジン・バナナ)を集めて優しくさとす。
「お父様は自分勝手なようだけれど、ちゃんと貴方達を大切に思っておいでよ。
バナナさんも心細いでしょうけれど、私を本当のお母さんと思って頼ってちょうだい。
貴方達の言葉は私からお父様にちゃんと伝えて、きっとわかっていただきますから。」
私が家を守らなければと立ち上がる母。
子供達の気持ちを聞いて自分も悪かったと態度を改める父。
ごめんよ僕達もっと仲良くするよと謝る兄弟。
ありがとうお母さん、と感涙するバナナ。
まあやっとお母さんと呼んでくれるのね、と喜ぶ母。
困難を乗り越え、優しさを知り、家族は一つになった。
ただし、煮汁は和食と程遠い味になっていた。これはナシだ。
醤油ですらバナナの主張を抑えられず。
より強固な絆を結んだかに見える家族の背後には、まだ解消しきれない闇が横たわっている。
肉じゃがバナナ おかず度4 ★★★★☆(バナナと煮汁抜きなら5だった)
●エントリーナンバー5 ・ バナナカレー●
バナナの持ち味を活かしつつ、バナナの主張を抑えてご飯に合う料理は作れないものか。
考えた末にたどり着いた調理法は「カレー」だった。
「カレーは全てを受け入れてくれる」というカレー信仰のようなものが無いか? 私には有る。
これで駄目なら他に頼れる物は無い。対バナナ戦線最後の砦だ。
2時間炒めたタマネギにチキンカレーの具を加え、バナナを大胆に入れて煮込む。
入れましょう、バナナを。取りましょう、灰汁を。
……と、調理中のメモには書いてあった。
バナナ続きで変なテンションになっている。
肉じゃがの時と違って煮込んでいる間のケモノ臭は少ない。
牛ではなく鶏だからだろうか。
煮込まれた材料にカレールーを投入してバナナカレーが完成した。
味を落ち着かせるために火を止めて冷ましている間、買い物に出かけた。
買い物から帰って来ると、まずバナナ臭がした。
カレーを作ったはずなのに立ち込めるバナナ臭。その違和感に愕然とする。
カレーは大丈夫なのか。カレーの神様を拝みながら暖めなおし、試食タイムに入った。
盛り付けると、一見普通のチキンカレーです。
バナナ臭さえ無ければ肉のように見えるバナナ。
試食。
……これは美味しい!
バナナだけ口に入れても美味しかった。
カレー自体はとてもフルーティーになっている。甘口カレーのようでいて、果物とスパイスが深みをかもし出している。
バナナをもっと少なくするか、カレールーを多目にすれば更に美味しくなりそうだ。
肉や野菜も柔かく甘くなっていて食べやすい。
バナナとご飯を一緒に食べても問題なく美味しいという奇跡の味だ!
「おかず」という世界に居場所を求めて彷徨って来たバナナ。
バナナは今ここに確かな居場所を見つけたのだ。
「僕はここにいてもいいのかもしれない。
僕はここにいてもいいんだ!」
おめでとう、おめでとう、おめでとう!
全てのバナナたちに、おめでとう。
バナナが世界の中心で愛を叫ぶ。
ぶらぼーぶらぼー。
バナナはカレーで立派におかずになった。
2日目のバナナカレーも美味しゅうございました。
バナナカレー おかず度5 ★★★★★
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● 結論 ●
「バナナはおかずに入るんですか?」の一言が言いたいがために始めてしまったこの企画。
今なら自信を持って言える。
「バナナはおかずに入ります。」
ただし、隠し味程度に控えめに入れる事をオススメします。
でも明日からは、また朝食として食べて行きたいと思います。
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コメント
こんにちは、いつもより長い記事が……と拝見していたら、私では想像もできないバナナ料理が色々と!
いろんな意味でりんかさんはチャレンジャーだと思いました……(笑)
青バナナを使ったバナナカレーは本場インドでメニューとしてあるそうですが、焼きバナナだけはちょっとチャレンジできそうにないです……
でも甘いお煎餅もあるから、案外合うのでしょうか?
投稿: 葉月美雨 | 2008年9月22日 (月) 21時53分
>葉月美雨さん
チャレンジャーですか、ありがとうございます(笑)
焼きバナナは凄いですよ。
大根おろしと醤油の実力を思い知らされます。
青バナナのカレーはあるのですね。さすがインド!
インド人には普通のバナナカレーにも挑戦していただきたいものだと思います。
投稿: りんか | 2008年9月22日 (月) 23時28分
や、別にカレーにバナナは普通じゃないでしょうか。
隠し味に入れる人いますよ。
カレーは何入れてもOKなミラクルスパイスなので、これをおかずと言って良い物かは謎。
バナナはカレーに合う食べ物である事が証明されただけのような…。
むしろ納豆バナナが気になります。
そして肉じゃがバナナ家の父は男と浮気してたとか、実は女装壁があったとか、そんなんですか?<自分勝手
投稿: ジミー | 2008年9月23日 (火) 11時28分
>ジミーさん
入れますか、カレーにバナナ。
でも隠し味じゃなくて目に見える形でごろごろ入ってるのがチャレンジって事で。
……まあ、カレーは反則ギリギリだな、と思った事は否めません。カレーは懐が深いです。
納豆バナナは是非ジミーさんが試食してみて下さい。
結果のご報告を心よりお待ちしてます!
父(牛)の素行は各自の脳内妄想劇場で補完していただきたいと思います。
その方がきっと私が考えるより面白い事になる(笑)
投稿: りんか | 2008年9月23日 (火) 17時38分
衝撃です!
バナナっておかずだったんですね!!
ちなみに納豆にあんこを入れるそおさん的には
バナナに納豆はわりかし有りなんじゃないかと思います。
ただしおやつ仕様ですが。
まあ、誰か試してくださいよ。
投稿: そお | 2008年9月25日 (木) 00時37分
>そおさん
私も衝撃でした。
まさか大根おろしでバナナがおかずになるとは!
納豆を甘くするという食文化をお持ちの地域はありますものね。
……フルーツ納豆?
うちは普段納豆を食べないので、是非試してくださいよ、そおさん。
投稿: りんか | 2008年9月25日 (木) 16時55分
バーベキューのとき、バナナを皮ごとアルミホイルにくるんで、炭火で焼いて食べます。普通においしいです。レモン汁と醤油をまぶしてフライパンで炒めてもいけます。
投稿: みー | 2008年9月25日 (木) 18時36分
青いバナナなら味噌汁で美味しくいただけると聞いたことがありますー・・・
あれ、オカズにはならないか
投稿: ぬる | 2008年9月25日 (木) 20時25分
>みーさん
なるほど、皮ごとですか。
それは家のグリルでも焼けそうですね。
試してみようかなぁ。
>ぬるさん
やっぱり調理用は「青いバナナ」なんですね。
その辺で手に入る黄色いバナナを味噌汁に投入するのは無謀なのでしょうね。
きっと、甘い味噌汁が出来上がります。(経験から推測)
投稿: りんか | 2008年9月25日 (木) 22時11分
バナナは手ごわいということが分かったので、とりあえず飽きるまで生で食べることにします。
彼のお母さんが今朝送ってきた房付きの巨大バナナが、すさまじいボリュームで冷蔵庫を占領中。
投稿: soso | 2011年4月26日 (火) 23時45分
>sosoさん
更新をサボり切っているブログに足をお運びいただいてありがとうございます。
バナナは結構日持ちしますので料理するよりそのまま食べた方が手間もかからず美味しいと思います。
お菓子に使えば良かったのかもしれません。
でもお菓子にしちゃうとカロリーが怖いことになりますね。
投稿: りんか | 2011年5月 3日 (火) 14時43分